AnotherVision Countdown Calendar 2020

AnotherVisionメンバーによる"Countdown Calendar"を2020年もお届けします

パルスワンをながめて


じめまして、フスマと申します。海外のニュースサイトの日本語版みたいな見出しから失礼します。 AnotherVisionで謎解きを作ったり、ブログを書いたりしています。オンラインでクイズをやるのも好きです。

Twitter等で一番良く見かける形式の謎である、画像一枚で謎を出題する「一枚謎」。謎を一度でも作ってみた、もしくは作ろうとしてみた人なら、一枚謎のネタを見つけた!ってとき、ありますよね。

f:id:Another_Vision:20201211002729p:plain 上の一枚謎を思いついたとします。 (答え:*1)頭の中には「土下座で地面に付く場所ってイメージしないと分かりづらいし、謎に向いてそう!」という発見をしています。(もしくは、スマホのメモ帳を見返していたら「土下座 接地面 非自明」という記述を見つけました)謎にしやすい感じの発見ですが、このアイデアから謎以外のものを作れないでしょうか?


作れます


作れます。というか、上の謎は実は謎以外の「とあるコンテンツ」を元ネタにしています。そのコンテンツとは……お笑い芸人のSAKURAIさん(画像参照)のネタです! f:id:Another_Vision:20201211011740p:plain

いや絶対違わない??????

すみません、テレビ番組のスクショ等はマズいだろうということでフリー素材で無理やり再現しました。本物は

↑こちらからご確認ください。


出典


SAKURAIさんのネタの構造は、だいたい以下のような感じです。

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この感じの画像で行きます。慣れてください
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なんだ?
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都道府県?なんかのランキング?
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モロヘ…あっモロヘイヤの生産量ランキングか?
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あーなるほど、すごいニッチなランキングだな~、面白いな
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!?!?
\ドッ/


初めてこのネタを見たときは腹がちぎれるくらいに笑いました。エンタの神様「♪クイズ!これ何だ?」という終わってるタイトルを付けられていること以外はとても大好きなネタです。
そして、記事冒頭の一枚謎は、実はSAKURAIさんの他のネタである f:id:Another_Vision:20201211015206p:plain を元にして作問していたのです。

先ほどの謎は、土下座をして床についた部分に書かれた文字を拾っていくと「と」「り」「し」「ま」「り」「や」「く」となり、答えは「取締役」。土下座モチーフということで半沢直樹要素も入れてみました。謎としては限定が甘い気がしていますが、15分くらいで作ったやつなのでどうかお目溢しください。 f:id:Another_Vision:20201211150002p:plain


さて、大切なのは同じアイデアからまったく様子の違う2つのコンテンツが生み出せるということ。

先程作った一枚謎と本家のSAKURAIさんのネタ。面白さを生み出すポイントが(この謎が面白いかどうかは置いといて)全く別の部分にあるのはおわかりかと思います。 「土下座の接地面について」の全く同じ発見をしたとき、この一枚謎を作るもよし、お笑いのネタにしてエンタの神様に出すもよし…。ひとつのアイデアから何を作るのか?を変えるだけで、まるで別の作品を生み出すことができるのです。


知のプロセス


お笑いのネタに加え、謎やクイズ、ブログや音楽、小説、ゲームなどなど多様なコンテンツに通底する面白さの一つに、「わからなかったものが、わかるようになる」があります。(無論、ここで挙げたコンテンツにはそれ特有の面白さもたくさん入っていますが)

例えばSAKURAIさんのネタであれば、最後になんの括りか明かすまではよくわからない単語の羅列だったものが、突然野菜の生産量ランキング(6位~10位)だったことがわかって笑いが起こります。

二人で行う漫才でも、ボケの人が筋の通ってないことを言うだけでは笑いは起こらず、ツッコミの人が「ウェットティッシュの断面図!」などと突っ込むことでようやくせいやさんの動きに説明がついて面白くなります。

クイズや謎解きが楽しいのも、「これ何だ?」という不思議なものが、答えを提示されるか閃くかによって説明されることが大きく関与しているはずです。…ウェットティッシュの断面図??

これは僕の感覚ですが、特に「笑える」または「楽しい」という感情を生み出すコンテンツは種類を問わず、この構造を多分に含んでいると思っています。シュールとよばれる芸人さんのネタであっても、例えばDr.ハインリッヒがM-1準々決勝で披露した漫才は「意味のわからない挙動」→「動きの意味が説明される」のサイクルをずっと繰り返すのがベースになっています。


とりあえず、ある種のタイプの面白さは、既存の概念のどこか一部が隠されていることによって生じていると言ってよいでしょう。そして、情報のどの部分が隠されるか?は、そのコンテンツのフォーマットによってほとんど規定されていると思われます。

となれば、「このアイデア面白そう!」となったときに、まずは「これのどの部分を隠して、どんな種類のコンテンツにしようかな?」と考えることは、アイデアを自分が求めるベストな形で料理するためには大いに役立つはずです。


パルスワンをながめて


やっとタイトルを回収できました。ここ書いた後から記事タイトル変えよう!ってなったら困りますね。未来の自分がタイトルを「特急侍ガタン崎ゴトの助 イギリスへ ~ユーロスターで推して参るンゴねぇ~」に変えないように祈っておきます。


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パルスワン
さて、パルスワンというポケモンがいます。かわいいですね。最近クリアしたポケモン剣盾では旅パの相棒として大活躍してくれました。

このパルスワンを見ていて、こんなことを思いました。
「パルスワンって犬なのに名前がスワンで終わるんだ、面白いな~」

一昨日このことに気づいた僕は、とりあえず名前に「スワン」が入るポケモンを調べてみたところ、名前に「スワン」が入るポケモンはパルスワンのほかに、白鳥をモチーフにした「スワンナ」しかいないことを確認しました。f:id:Another_Vision:20201211161023p:plain

スワンナ
この気付きをネタツイとしてTwitterに放流するよりは、一枚謎にしたほうが面白そうです。

とりあえずルーズリーフを広げて謎のアイデアを考えていたその時、 矢木に 電流走る――! これ、本当に謎として出すのがベストなのか?

僕がこのアイデアで一番おもしろいと思っているのは、「犬なのにスワン」だというところ。その部分が隠してあって、後から気付けるようになっているのが最善の見せ方です。 謎にするのなら、多分「パル???」「???ナ」という感じで文字を隠すことが必要になってきますが、文字が一部だけ見えたら結局ポケモンの名前を全探索するだけの作業。

せっかく名前が3文字もかぶっているのに、これを閃きに活かすのは難しそうです。頑張ればワンチャンありますが(犬だけに)、「パルスワン」を完全に隠したままで謎に起こすのは僕の力量ではできませんでした……。(誰か強い人がいたらこのネタで一枚謎作ってみてほしいです)

というわけで、形を変えてクイズにしてみました。

現在登場しているポケモンのうち、名前に「スワン」という言葉が入る2体とは、「しらとりポケモン」のスワンナと、「いぬポケモン」の何?

推敲もせず適当に書いたので問題の作りはきわめて雑ですが、概形はけっこういい感じ。「名前にスワンが入る」 という情報だけからパルスワンに辿り着くのは大変だろうということで、ポケモンの分類も盛り込んでいます。

こんなふうにポケモンの分類(いぬポケモン)から名前(パルスワン)を考えさせられるのはクイズという形式の強みですね。

問題を読んでいるときに『「スワン」が入る2体とは…』の部分では「白鳥のポケモンって2匹もいたっけ?」と疑問が生じます。そして、後半『いぬポケモンの』を聞いた、あるいは答えのパルスワンを思いついたときに「あーそういうことか!」と「スワン」から「ワン」へ視点が切り替わって疑問が解決され、面白さを生み出すことができました。「わからなかったものが、わかるようになる」を実現できていそうです。

クイズ以外にも、「ポケモンを知らない友人に勘だけで進化先を当ててもらった」みたいなブログ記事も書けそうですね。スワンナとパルスワン以外にも、ココロモリハハコモリ、サッチムシとデンヂムシのように「お前ら別系統なのかよ!」みたいな組み合わせがけっこうあるので、その辺りの勘違いを見られれば面白くなりそうです。ただ僕にはポケモンを知らない友人なんていなかったのでしめやかに没になりました。




そんなこんなで、この気付きは謎や記事よりはクイズとして出すほうが向いてそうな題材だな、ということに気づけました。ここから裏取りや推敲を重ねれば、どこかで出せるクイズに昇華させられそうですね。結局クイズではなくAVCCの記事としてここに供養されることになったわけですが。


「これ謎に使えそう」から一旦止まってみる


僕はアウトプットに慣れている手段が謎とクイズと文章しかないので、身近な気付きの行き先がこの三択だとしましたが、人によって思いついたことをどんな形にできるか?は様々です。

たとえば絵であったり音楽であったり、舞台やラップや動画や小説、音MADなど、この世には本当に多種多様な表現方法があります。それらの表現方法ひとつひとつに強みや弱みがあり、作り手の向き不向きもあります。その中からアイデアと作り手である自分の組み合わせにベストマッチする表現手法を考えてみるのは、結構楽しい行為です。
特にこのブログを読んでいるような人はなにか思いついたら「これ謎にできそう!」と考える機会が多いと思いますが、それを取り敢えずで謎にしてみるのではなく、「どんな表現方法ならこのアイデアが一番輝くかな?」と考えてみると、何かを作るという体験がさらにハッピーなものになるんじゃないかなと思っています。 f:id:Another_Vision:20201211170024p:plain

おまけ


SAKURAIさんのネタを題材にした謎解きを紹介しましたが、実はクイズにもなっています。面白いのでぜひご確認ください。

www.youtube.com

*1:取締役 解説は後述します